直伝 木づかいのコツ 屋外での木材の利用と塗装1 – 『住宅ジャーナルウッドテクノロジー』2025年01月号掲載

守谷インテリア木工所が住宅ジャーナルウッドテクノロジー(株式会社エルエルアイ出版) 2025年01月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( jwt_2501d1.pdf )。

直伝 木づかいのコツ 屋外での木材の利用と塗装1

守谷和夫 (有)守谷建具店 守谷インテリア木工所

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
2021年7月号まで住宅ジャーナルで22回にわたって連載していた「木づかいのコツ」ですが、終了後もまた守谷さんのレクチャーを読みたいという声を多く頂きました。発想が面白いとのことで、きっと、この木工所の2階の窓から見えるトトロの森と狭山茶のお茶畑の力なのではないでしょうか…。ところでお仕事の方はどうですか?

[ 守谷 ]
無垢材専門なので、住宅の仕事は、さすがにこの不況で減ったね。今は店舗の依頼が多い。6~7割は店舗かな。

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
木工所に長い板がありますが、何に使うものですか。

[ 守谷 ]
これは鎌倉の日本料理店でカウンターに使うものだ。無地で1枚長さ4.5m、巾60cmある。観光客のお客さん向けに杉材を使っている。寿司屋のつけ台だとヒノキを使うが、この大きさだと価格は、想像がつかないよ。

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
インバウンド需要を取り込んでいますね。

[ 守谷 ]
それと相談が多いのが、外回りの木工製品だ。この間も門扉の相談があったが、屋外で長くもたせるためにどう作ったらいいか分からず、インターネットを検索して、うちに辿り着くらしい。ちょっと、外に出て現物を見てみよう。

《移動》

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
近所の「さいたま緑の森博物館」に着きました。ここは、里山の自然そのものを展示した屋外博物館(フィールドミュージアム)です。杉の枯れ葉と枝で作ったトトロが見えます。田んぼの前でツーリング客の方がペダルを漕いでいます。

[ 守谷 ]
「バイクベンチ」というアート遊具作品の自転車のサドルとペダルは、製作協力して、木の部分をうちで作ったんだ。サドルには桐、ハンドルには、ブナの木を使っている。11月にできたばかりだ。

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
ブナの木ですか、ドイツでは古民家にも使われているそうですが。

[ 守谷 ]
ドイツは寒冷地だから持つかもしれないが、日本は高温多湿だから、屋外じゃ大してもたない。ここでは塗料で持たせる計画なんだ。「MTウッドコート」という新しく共同開発した塗料でね。水性で透明な木材用塗料だ。紫外線保護と防腐を強くしている。
日本では屋外で一般的にウレタン塗料を使うんだが、環境先進国のドイツでは、ウレタンは紫外線で分解されにくいので、あまり使用されていない実情がある。そこでウレタンの特性を応用し、紫外線を吸収する物質で桐材への紫外線をカットすることができる水性塗料にした。
うちを建て替えた時に、ドイツ性の自然保護塗料を外壁やドアに塗って試してみたんだが、日本だと長雨で黒カビが生えてしまう。防腐性能が高くないと長持ちしないんだ。この新しい塗料でも、屋外だと3年ほどすると効果が落ちてくると思う。だから、3年に一度塗り直しをしてメンテナンスする予定だ。

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
桐は、長持ちするんですか?

[ 守谷 ]
桐は、空気の層が多いから軽いしい、細胞の構造が違うので、水も空気も通しにくく火災にも強い。また体積の空気率は、95%~90%で、含まれる空気は炭酸ガスと思われる。

[ 旅人 ]
私は長野の佐久から来ましてね、長良川の氾濫でうちの桐箪笥が流されました。後で見つけて箪笥を開けてみたら、中の物がきれいで無事でした。

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
ツーリング客の方からも貴重な証言が得られました。

[ 住宅ジャーナルウッドテクノロジー ]
今度は、塗料を塗らない木材の状態を見に川原の杭を見に行こう。自分が27年前に書いた論文の通り、杉の辺材・芯材の細胞の仕組みについで分かるだろう。