木づかいのコツ 無垢建具の仕入れのコツ – 『月刊住宅ジャーナル』2019年09月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2019年09月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal-1909d1 )。

新連載 直伝 木づかいのコツ 無垢建具の仕入れのコツ

第9回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月刊住宅ジャーナル ]
今月号では、無垢材を使った建具づくりの仕入れのコツをテーマとして、ハイビック埼玉店(埼玉県熊谷市)の木材市場を訪問しました。ここは工務店など建築のプロ向けの会員制直需木材市場です。記念市のセリが始まった頃から雨も晴れて、大勢のお客さんが集まってきました。すごい活気ですね。

[ 守谷 ]
守谷建具では、いつもここで材料を仕入れているんだ。去年は、自宅の改修もやっていたから、銘木や木材だけじゃなく、建材や住宅設備機器も含めて月平均で大体100万円くらい仕入れてるよ。

[ 月刊住宅ジャーナル ]
建材から設備までいろいろありますが、一枚板の品揃えが豊富ですね。守谷さんは、さっそくセリで一枚おとしました。モミの木(材寸法2500×75×1030mm)ですね。これは建具用ですか。

[ 守谷 ]
いや、建具は桧や杉で作っているから、これは造作家具向けだ。建具を買ってくれたお客さんに家具も作るんだ。
本命は、九州産の杉だったんだけど、ほしがっている工務店もいたから、ゆずることにしたんだ。そもそも建具向けの材料は、工務店が欲しがっているものとは全然違うんだ。
例えばこの神代杉(じんだいすぎ、注1)は、建具向けだ。よく見ると、木の表面にミゾがあってテーブルには使いにくいと思うだろ。でもうちの無垢(むく)建具は木裏(きうら)の方を見せるもんだから、木表(きおもて)側にミゾがあっても、埋め木をすれば十分に使えるんんだ。ここの店頭に出ている一枚板は、当たり前だけどみんな木表を見せている。でも無垢の建具は木表を使ったら即クレームだ。反りが起きない木裏を見せるから、この板を挽いたら、木裏がどう見えるかと言うことが重要なんだ。

[ 月刊住宅ジャーナル ]
つまり、見える表面ではなく、見えない裏側が重要なんですね。

[ 守谷 ]
最近ではインターネットを見て施主支給で一枚板を購入したいっていう一般のお客さんが多いもんだから、業者目線だけじゃなくて、エンドユーザー目線も必要になっているんだ。いまセリにかけている丈の短い杉板も建具の腰板向けだが、最近は一枚板をずらりと並べてお客さんに見せることが多いから、化粧板向けに工務店に譲ることにした。今日はこの板を仕入れるよ。

[ 月刊住宅ジャーナル ]
「日光東照宮」と産地が書かれている杉板ですね。特別な事情で出荷された神域の木材のようです。これならエンドユーザーも納得の銘木です。

[ 守谷 ]
あと先ほど話していた、九州産の杉もいい。九州産は材質が柔らかいが、台風の通り道だから木目の暴(あば)れたものが多い。関東だと山武(さんぶ)杉(千葉県東部産)もいいのがあると仕入れる。山武杉も木目も暴れたものが多いんだ。

[ 材木店 ]
この九州産の杉と、あそこの九州産の杉は、同じ一本の木からとったものです。厚みが3寸(約10cm)だから、5分(約15mm)で挽くことができます。

仕入れ交渉
[ 守谷 ]
あと数枚同じ木で揃えてもらってから買うことにした。無垢の引き戸だと同じ木からとっている方が、木目が揃っていいんだ。

ブルーシートをひらく
[ 守谷 ]
今日は雨が降っていたからブルーシートがかかっているんだが、例えばこの桧も、引き戸に使う框(かまち)にいい。木裏を2枚重ねて使うんだ。框向けには三面無地(さんめんむじ)の桧を探して仕入れる。木製サッシ用だと四面無地(よめんむじ)の桧を木裏見付(きうらみつけ)にして使う。四面無知の桧があったら買うから集めておいてくれっていつも頼んでいるんだよ。

[ 月刊住宅ジャーナル ]
今日は、守谷見学の仕入れを見学させてもらいましたが、材料の仕入れ段階から他者と完全に差別化ができているのが驚きでした。

[ 守谷 ]
最近は職人不足のせいか、木材市場の利用者が年々減っているそうで残念だ。やはり市場に直接足を運んで、この木ならこんな使い方もできるなって自分で発見するのがプロの仕事の醍醐味(だいごみ)なんだ。だから、自分流の木の使い方が分かってくると、もっと楽しく利用できるようになるよ。

注1 神代杉: 土や火山灰や水の中で、長い年月、埋もれていた大昔の杉のことを指す。