木づかいのコツ 特許で企業と共同開発 – 『月刊住宅ジャーナル』2020年06月号掲載

守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2020年06月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal-2006d1.pdf )。

新連載 直伝 木づかいのコツ 特許で企業と共同開発

第15回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫

[ 月間住宅ジャーナル ]
新型コロナの影響はどうですか。埼玉県でも感染拡大が広がっているようですね。

[ 守谷 ]
近くの施設で入所者の集団感染が起きてしまった。所沢市や狭山市のあちこちで感染者が出ているから、むやみに外出できない状況だ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
では、今月は電話取材でいきましょう。

[ 守谷 ]
今年1月20日に新しい特許がおりたんだ。建築資材のメーカーとの共同申請による特許だ。今月は新しい特許の話をしよう。

[ 月間住宅ジャーナル ]
この特許の目的は一体、何ですか?

[ 守谷 ]
目的は国産材の構造利用だ。これまで使われてこなかった工法でも、この特許を使えば、木材を利用することができるようになる。

[ 月間住宅ジャーナル ]
この特許申請で一番難しかったのは何ですか?

[ 守谷 ]
最初に申請した時に分かったんだが、竹を芯材にしたいわゆる木舞(こまい)土壁というのは昔から作られていることがあって、木材を芯材にしたのでは、一般的過ぎて特許としては申請できないという話があったんだ。特許にするのは、竹を木材と同じ素材と考える「誤解」を否定しなければならなかった。
実は、竹をコンクリートに入れると、長持ちはするんだが、コンクリートと剥離するんだ。剥離する理由は、竹はイネ科なので、表面がシリカ質の成分の被膜になっているせいだ。
シリカというのは、竹の表面のツルツルしているところで、これがあるから、竹の木舞は長持ちするんだが、コンクリートは、竹のシリカ質のせいで、コンクリとと竹の繊維を密着させることができないんだ。
申請の内容では、シリカ質の成分がなくて、コンクリートを密着させて、剥離や爆裂が起きない材料だけを選んでいる。
この辺が、今回の特許の決め手となった箇所だ。

[ 月間住宅ジャーナル ]
ところで、特許についての一般的な疑問をぶつけてみたいのですが、そもそも何のために特許を取得するのですか?建材・設備の分野ですと、コピー・海賊版防止、企業ブランド維持といった意図のものが多いようです。一方で本当に必要なモノについては、他社の特許を侵害しないようにして、別の技術で同じ効果を出すように申請するケースもあります。業界では、そもそも特許は本当に必要なのかという「特許不要論」の意見もあるようです。

[ 守谷 ]
特許を取る理由の一つとして、製品開発よりも特許取得の方が、金がかからないということがある。実際に製品化しようとすると、数千万単位の投資が必要なものもある。だから、開発に投資するよりも先に
特許を取得した方がいいということになる。
自分がこれまで出してきた特許で、すでに実用化しているのは数製品ある。主な機械は、加熱減圧含浸装置(株式会社ヤスジマ製、守谷建具が木材学会で発表)、木材表面木殺(きごろ)しによる含浸装置(飯田工業株式会社製)がある。
一方で、これらの製品に類似した機械としては、木材の振動減圧乾燥装置(Kメーカー)、木材の圧縮もどり過程による含浸装置(Tメーカー)などがある。
そもそも特許の類似製品が世に出ないようでは、技術としては価値がないに等しい。
一方で他社にそっくり真似されないようにするためには、特許申請の原則として、技術を完全に網羅して記載すべきではないということがある。そうしておけば、類似した製品は、木材の物理的な原理と経験の不足により、性能が不十分なものとなるだろう。
特許を取るもう一つの理由は、開発のための仲間づくりだ。「技術指導するから一緒に特許を使った製品の開発をしないか」という意図で出しているものなんだ。もちろん、コピー防止の意図もあるんだけど、むしろ、技術情報として開示して、知財を求めている企業と一緒に開発をしようという意図で出しているんだ。今回取得した特許もそういう狙いだ。特許の「詳細な説明」を見るとよく分かるだろう(P34概要参照)。

[ 月間住宅ジャーナル ]
一読してみたのですが、よく分かりません。木材、合板、ケイカル板、大平板、フレキシブルボードなどを芯材にして、両側をコンクリートで固めたPC板(プレキャストコンクリート板)だということは分かるのですが、浄化槽のコンクリート版、ビルの床材、電磁波対策などさまざまな用途が書かれていて、製品化として何が主眼なのかが分かりません。

[ 守谷 ]
特許の詳細説明では、様々な可能性が列挙されている。このうち、一番重要な用途は1つだけだ。残りの用途はカモフラージュのようなものだ。
特許というのは、申請のための準備も更新のための維持費もかかるから、いくら建具屋の道楽とはいっても、趣味だけで出せるものではない。これは共同開発者の資材メーカーの方で、開発の本当の狙いを強調したくないという意図があって、何のために使うのかという用途をあえてぼかしているんだ。
これについては共同申請者のメーカーの企業秘密にあたるから、自分の方からは教えることはできない。特許の中には、そういう狙いのものもあるんだ。もちろん、浄化槽工事の軽量化には役立つし、炭(カーボン粉)を入れれば電磁波対策にも、一緒に開発しようと誘っているんだ。


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