守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2019年12月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal-1912d1 )。
新連載 直伝 木づかいのコツ あやとりの原理で強度アップ
第11回(全20回予定)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫
[ 月間住宅ジャーナル ]
守谷建具の木工建具では、桧材の木表と木表を張り合わせてて、ドアの表面にも木裏を使うそうですが、どうしてなのでしょうか。
[ 守谷 ]
木表と木表同士を組み合わせるということは、伝統的な木造建築はもちろん、橋梁や超高層タワーの技術にも相通じるところがあるので一つ一つ説明しよう。
最近では利用が少なくなっているが、根曲がりの松を天井裏でみたことはあるだろうか。例えば農家の納屋の天井なんかでよく見かけるむくれた梁(はり)があるだろう。
[ 月間住宅ジャーナル ]
古民家などでたまに見かけます。地松(じまつ)の梁ですね。
[ 守谷 ]
その梁は、上向きに曲がっているか、それとも下向きに曲がっているか?よく注意して見てみると上向きに曲がっていて屋根を支えているんだ。もし、これを逆の下向きにしたら、建物の構造は弱くなってしまう。だから、昔の大工は曲がっている方を上向きにしてつけたんだ(図参照)。
これはダムの構造と同じだ。川の水をせきとめるためにダムは上向きに反っている。
むくり木の反発する力を梁や床組に利用すると強度に優れた木組みを作ることができる。これは無垢材を使った無垢建具でも同じことだ。反りがでる木を2枚逆向きに組み合わせて1本の框(かまち)を造れば、框の反りがなくなる。同じことは、橋でも言える。
吊り橋は、ワイヤーを支柱で留める構造が一般的だ。しかし、瀬戸大橋のような超大型の吊り橋になると、ワイヤーを支柱で留めると、風の揺れに支柱がワイヤーで引っ張られる。そこで瀬戸大橋では、支柱をつらぬいてワイヤーを通してその上で留めるようにした。こうすると風で揺れてもプラスマイナスゼロで、引っ張る力がゼロになる。引く力が押す力に変換されるため強度が増して支柱の負担が減るんだ。
これを守谷建具では「あやとりの原理」と呼んでいる。例えば一本の支柱に穴を通して、反対側に引っ張ると、引っ張られたものが反対側に動くだろう。
こうした反発の力を反対にそる力に変換する構造体が東京スカイツリーだ。あの構造体もねじれていて、スパイラルで力を変換しているんだ。
最新の建築物もそうだが、堂宮建築でも同じことが言えるそうだ。五重塔のような建物では、ほぞを穴に入れる時は、低層ではあえてゆるめに入れておくと、高層に積み上がるに従って重みでしまってくる。塔が風に揺れると木がねじれながら乾燥するのでしだいに締まってくるんだ。昔は生木を使っていたから、今よりも自然の木の反りやねじれの力をうまく利用しようとしていたんだ。
こうしたあやとりの原理の力学を応用して開発したのが、守谷建具の耐震パネルだ。一つは垂直・水平の杉の格子に鉄筋を斜めに入れているタイプで、これは住宅よりももっと耐力の必要なビルなどの建築物向けだ。もう一つは鉄筋を使わずに杉の格子を斜めに使ったものだ。住宅のパネルにも応用することができる。
[ 月間住宅ジャーナル ]
漆喰の下地に入れる小舞(こまい)を巨大化して、筋交いのように斜めの角度にしたようなパネルですね。一定の耐力が期待できます。
[ 守谷 ]
あやとりの原理は、フラッシュドアの芯材にも応用することができる。一般的なフラッシュドアの芯は横に入れるが、守谷建具では反っている芯桟を3寸(約10cm)間隔で縦に入れてホチキスで留めて、ベニアを張って作っている。こうすると、それぞれの芯材の反りが互いに反発して引っ張る力をゼロにするので、強度に優れたドアを作ることができる。
[ 月間住宅ジャーナル ]
最近は小径木からとった木材が多く、芯桟も反りやすいので、反りの反発を利用することで強度に優れたドアができますね。