東弘一郎氏のアート作品『バイクベンチ』の制作に参加しました。バイクベンチは八幡湿地駐車場(糀谷八幡神社(埼玉県所沢市糀谷78)の向かい)に設置してあります。詳しい説明は記事の最後にあります。
バイクベンチ
東弘一郎所沢市では、緑豊かな大地、歴史的な風土など貴重な資源や要素を備えた三ヶ島地区において、アートによる愛着や誇りの醸成、地域活性化を図ることを目的として、座れるアート作品「アートベンチ」を展開しています。
自転車の形をしたこちらの《バイクベンチ》は、座って休むだけでなく遊べるベンチとして構想されました。作品に使用しているペダルは、地元の三ヶ島ペダルから提供いただきました。
座面の木は、有限会社守谷建具店が桐材を用いて制作し、木材の新しさを長期に保存する抗菌と日焼け止めの技術を宮大工棟梁 田子和則氏から提供いただきました。
三ヶ島地区が誇る技術要素をふんだんに取り入れたこの作品は、自転車と金属を組み合わせた動く立体作品を世界中に展開する東弘一郎氏が制作しました。制作アーティスト: 東弘一郎
制作: 株式会社あずま工房
制作協力: 株式会社三ヶ島製作所、有限会社守谷建具店、宮大工棟梁 田子和則
設計: 関田重太郎
企画協力: 株式会社KADOKAWA
設置主体: 所沢市文化芸術振興課
問合せ先: 04-2998-9211
欅材と桐材を使った巨大木製車輪 芸術作品として佐原/都内で展示 – 『住宅ジャーナル ウッドテクノロジー』2023年06月号掲載
守谷インテリア木工所が住宅ジャーナル ウッドテクノロジー(株式会社エルエルアイ出版)2023年06月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( jwt_2306d1.pdf )。
欅材と桐材を使った巨大木製車輪 芸術作品として佐原/都内で展示
美術作家 東弘一朗 × 有限会社守谷建具店(埼玉県所沢市) × 佐原みらい運河株式会社(千葉県香取市)
長年の確立した技術として、先代の技を受け継いで製作を続けることが多い木工・建具業界において、守谷インテリア木工所(有限会社守谷建具店、所在地:埼玉県所沢市、守谷和夫代表)は、無垢材を使ったドアや特注品の建具・木工家具等の製作において、物性を理論化して製造に取り組んでいることから、業界では珍しい事業者として知られている。
今年4月には、アート作品の部材として木製の車輪を製作するようになった。千葉県香取市で開催される佐原の大祭の山車に用いられる地元でハンマ(半間)と呼ばれている木製車輪である。高さ9m、重量4トン超の山車を動かす直径約1mの大きさのハンマをモチーフとして、約2倍の大きさ(直径1.8m、厚みは270mm。1輪あたりの重量は約150キロ)とした。表面には実際の山車で使われるハンマと同じ材質の欅材を張り、芯材には、搬入が容易になるように、桐の集成材を用いた。桐素材は軽いので、男性4人で運んだ。製作には、「朝5時半からはじめて、25日で間に合わなかったから、大体1か月かかった」(守谷代表談)とのこと。
耐久性に優れた木製車輪
守谷インテリア木工所では、今から8年前の2015年に、船戸区の山車のハンマを製作した経緯がある。24区の山車が曳き廻され、それぞれの地区が、独自に工夫してこだわっているが、中でもハンマは重要な箇所で、集成した箇所がはがれたり、デコボコに変形したりするので、「(接合部が)絶対にはがれない車輪にしてほしい」という依頼で製作。納品後好評で「6年経っても3mmしかすり減っていない」とのこと。各地区では12~13年で2cm減って事故防止のために交換されることが多いハンマであるが、船戸区では8年経った今でも損傷なく使用されている。
「関東3大祭り」として知られる佐原の大祭。全国的に見ても珍しいのは、約4tの重量の山車を、木製の車輪で曳き廻すことである。使用頻度が高く、佐原の大祭(7月の本宿祇園祭と、10月の新宿秋まつり)の他に、年8回(2023年計画)の特別曳き廻しも行っており、年間で約10回もの曳き廻しがある。山車の曳き廻しは、全国の祭りで行われているが、祇園秩父・高山の「3大曳山」をはじめとして主要な祭りの山車では、金輪つきの車輪が用いられている。これは、木製の車輪に焼いた鉄輪を直接押しつけて鉄が冷えて収縮する性質を利用して固定する伝統的な鍛冶技術である。金輪を使わない木製の車輪は、源氏車(御所車)とも呼ばれ、漆器や蒔絵の文様としても知られている。水紋と一緒に描かれることがあるのは、水車としての用途のほかに、乾燥すると割れるので、川の水に漬けて保管していたためと考えられる。佐原では戦前、松の大木を輪切りにして、泥田に漬けて使用していた(現在は専用のガレージに格納)。舗装道路での曳き回しや、文化財としての保存方法、小径木の集成による有効利用など、現代の状況に応じて独自の木工技術として進化を遂げたと考えられる。
製作にあたっては、サブロクサイズで1枚12kgの桐の集成板(1枚30mm厚)をサンダーで厚さを1割減らし円形にして1枚9kgとし、穴だらけにして7kgに軽量化。65mmの半ねじを1輪2000本2輪で4000本埋め込んだ。表面の化粧材の欅(12mm厚)は大手張り(フラッシュドアで用いる製法)と同じ方法で留めてあるが、硬いために仮止めには仮釘に蝋を塗り固定。本止めには鉄のフィニッシュネイルでは引き抜きができず、ステンレスを使用。引き抜きの穴は砥の粉で埋めて塗料で固めた。昔の自動車の板金において、砥の粉にラッカー(ニス)を混ぜてぬって、硬くなってからやすりでならしていたことを参考にした。仮釘が入りやすくするために昔は石鹸を使っていたが、アルカリ性で腐食するので、蝋やシリコン素材が使いやすい。こうした摩擦抵抗を減らす工夫は、医学用の注射器においても、針の激痛を抑えるためにも応用されているという(針を細くしているほか抵抗値を減らす素材を使用)。桐材は、全部で9枚。円形の9分の1(40°)ずつずらしながら留めた。40°ずらして付けると360°でひとまわりして、固定される。90°で留めると、長さと巾にずれが生じるほか、接合部が集中し、木端などの弱い箇所から壊れ始めて、しだいに、6角形や8角形に変形してくる。そのため、40°に留めることで摩耗しても円形を保つようした。中央部には、NCルーター(直径16mmのスパイラルルーター)を使って、片側から入れ、直径約150mm孔をあけた。下水管の寸法を基準にして、トンネルのように掘り、下水管を差し込みながら組み立てることで、微細なズレを抑えた。
アート作品として注目
こうした佐原のハイテクを駆使したハンマに魅了されたアーティストがいる。車輪をテーマとした芸術作品で注目を集める若手美術作家の東弘一郎氏(25歳)である。東氏は、自転車のペダルで漕いで回転させることができる展示用の軽量なハンマを守谷氏に依頼。東氏自身が運営する茨城県坂東市にある鉄工所(あずま工房)でシャフトなどの鉄製の軸材などを製作し、「東弘一郎個展:デッカ・ハンマ・タイヤ・プロジェクト」として、4月20日~5月14日の期間で香取市佐原の「古民家ギャラリーいなえ」で展示した〔主催:佐原みらい運河(株)、佐原アートプロジェクト実行委員会、協賛:(株)エヌアイデイ、(一財)小森文化財団、企画協力:(有)守谷建具店、Color Lounge Art(株)、NPO法人佐原アカデミア、助成:(公財)クマ財団〕。
祭りが大好きな地元の人にとっては、この展示品を見ると、佐原の山車のハンマだと一目で分かるという。古民家いなえでの展示では、主催の佐原みらい運河(株)の立澤取締役が概要を説明。地元のお祭りを長年支えている方も駆け付けて、佐原の山車とハンマにまつわる、汲めども尽きぬ思いを語ってくれた。東氏は「今回の展示は、地元の人に見てもらうことがねらい。大変手ごたえを感じている。6月~7月にかけて都内で行う展示では、佐原の魅力を伝えていきたい」と語った。
自転車と一体となったハンマのアート作品は、代官山の「アートフロントギャラリー」にて初披露される予定。
【展覧会名】
東弘一郎個展「HANMA」
【開催期間】
2023年6月9日(金)2023年7月16日(日)
(水~金)12:00~19:00
(土・日)11:00~17:00
※休館日:月曜日、火曜日
【開催場所】
アートフロントギャラリー
東京都渋谷区猿楽町29-18
ヒルサイドテラA棟
Tel.03-3476-4868
東弘一郎『デッカ・ハンマ・タイヤ・プロジェクト』
東弘一郎氏の展示会『デッカ・ハンマ・タイヤ・プロジェクト』の作品制作に参加しました。展示会の紹介をします。
東弘一郎
「デッカ・ハンマ・タイヤ・プロジェクト」
この20年間で、数百万人の「ものづくり職人」が日本から消えたと言われています。職人技という言葉は、テクノロジーの進歩によりロボットに使われる時代が来るかもしれません。佐原で曳き廻しの山車を初めて見た時、東の関心は4トンの重さを支える、かじ取りの仕掛けのない半間(山車の車輪)と、それを製作した職人にありました。「下手なもの作ったら人が死ぬ。だから下手なものは作れない。」実際に佐原の半間を製作した木工所の職人を訪れ聞いた言葉は、匠の技を学習した機械からは聞けないものでした。東はこれまでに、各地でのフィールドワークを元に、その地域で捨てられた家庭内放置自転車を使い作品を制作し、もう一度それらに命を吹き込むことで大量廃棄という問題を浮き彫りにすると同時に、大量生産の陰で密かに消えていくものづくりの現場に目を向けてきました。
本展では、ひとりの木工職人が営む工場に東が通い協働制作した、高さ1.8mの「デッカ・ハンマ・タイヤ」を展示します。完成形は二輪となる予定の本作は、子供の力でも回転させることが可能となり、その異様なスケール感と視覚のイメージがもたらす矛盾は、鑑賞者の目を見えていなかったものへと向けさせます。
展示会の資料より引用
東弘一郎氏のプロフィール
2023-11-21 追記
東氏から提供された資料から抜粋して東氏プロフィールを紹介します。
木づかいのコツ リフォームはシックハウスの元 – 『月刊住宅ジャーナル』2022年06月号掲載
守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2022年06月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal_2206d1.pdf )。
連載 直伝 木づかいのコツ リフォームはシックハウスの元
補遺篇
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫
[ 月間住宅ジャーナル ]
大きな板ですね。何に使うものですか?
[ 守谷 ]
お寺なんかに使う杉の天井の一枚板だ。11mm厚の幅3尺、長さ4mある。養生としては、木表が乾きやすくて、湿気があると沿ったり割れたりしてしまうから、木表同士を合わせて木裏を外に向けて乾かすのがコツだ。
初めてお寺の建具をやったのは、22~23歳の頃で多福寺(三芳町)の本堂をやったので見に行ってみようと思って、この間いったんだ。半分目つぶってみないとダメかなと思っていたんだが、楔代(ほぞ穴を手鑿で拡げて楔を打ち込んで緩まなくする強固な留め)で留めた木曽ヒノキの建具は胴付きが一つも透いてなかった。これは木裏は必ず外部に向けるといった基本を守っていたおかげだ。国産材の杉・桧は、木裏に出る芯材部の空気水分の透過性が低いため外部に向けるといい。
[ 月間住宅ジャーナル ]
こちらは、ハイドアですね。
[ 守谷 ]
高さ2400mm。設計事務所からの依頼で作ったんだ。欄間付きの方が、軽くて使いやすいんじゃないかと思うんだけど、最近の流行なんだろうね。
無垢の木を使うと体にいいから、健康住宅に使いたいって依頼が多いよ。そこに置いているテレビラックも化学過敏症のお客さん向けに作ったもんで、無垢材で板の巾はぎ以外は木ネジと釘で留めた。
この間もお客さんが訪ねてきてね。勤め先の会社でリフォームしたらシックハウスになったから、無垢の木のドアを使いたいっていうんだ。
[ 月間住宅ジャーナル ]
リフォームをすると、どうしてシックハウスになるんでしょうか。ぜひ、詳しく聞かせてください。
[ 守谷 ]
サラリーマンで、何でも外壁なんかを塗り替えている工事中になったそうなんだ。おそらく気化した溶剤や、もしくは気化した物質の臭いを吸ったのが原因なんだろうな。真夏の暑い時や締め切っている時が特にまずいんだ。
エタノールとメタノールの違い
自分も20年ほど前に実験で二液性のエポキシ樹脂を硬化剤で混ぜ合わせていた時に、ハエが飛んできたらポトッと落っこちたのを見たことがある。化学反応で発生するガスは有害な物質が多いんだ。
木材には、ホルムアルデヒドが含まれていると誤解している人もいるんだが、シックハウスの原因と言われているホルムアルデヒト、つまりホルマリンは、常温の木そのものには含まれていない。
まずはメタノールとエタノールを混同しないことが大切だ。木材に含まれる油成分をテレピン油と言うんが、この主成分はエタノールだ。エタノールはお酒と同じアルコールだ。エタノールを120℃~130℃に熱して酸素を与えるとホルムアルデヒドになる。
一方で石油から作る工業用のアルコールのことをメタノールと呼ぶ。終戦直後は、ヤミ市でニセモノの酒を買って失明した人もいたんだが、これは工業用アルコールのメタノールを飲んだためだった。間違って柿の渋抜きに使用されたこともあるそうだ。値段で比較すると、メタノールの方が、エタノールよりも断然安い。
守谷建具でも自然塗料を使っているんだが、主成分が植物性のオイルになっている。オレンジの皮の物質と同じで、メタノールじゃなく、安全な植物性の揮発物質だ。
また、内装ドアの接着剤には、耐水性の酢酸ビニール系の接着剤を使う。
[ 月間住宅ジャーナル ]
一般的にシックハウスといいますと、アレルギーやハウスダストの症状から、化学物質過敏症まで様々な症状を指しておりますので、編集部で一覧化してみました(P16参照)。お客さんの事例は、典型的な化学過敏症の症例にあたりますね。
[ 守谷 ]
シックハウス対策の難しいところは、過敏症の程度によって、それぞれ対策が違ってくることだ。
以前、合板を使わない無垢材だけの家を建てて、建具も全部無垢材で作ったことがある。奥さんが重度の化学過敏症でね。他の建築屋さんで建てた家に住んでいたんだが、シックハウスがひどいもんだから、建て直したんだよ。
こういう症状だと、木材も吟味しないとダメなんだ。特に腐りにくい木材は反応しやすい。杉の芯材(赤身)、桧の芯材などは、ほとんどの人は体に良いし、匂いを嗅いでも、いい匂いですねと良い反応をするんだが、ごくまれに過敏症の反応を起こす人がいる。
ケヤキの芯材(赤身)は腐りにくく匂いも強いが動物には良いとされている。餅つきの臼と杵はケヤキの芯材で作られている。面白いのは、犬にケヤキの芯材を見せるとすぐになめるし、ケヤキの新芽を見つけると喜んで食べる。おそらく防腐効果のあるタンニンの成分のせいだろう。
また、外まわりのウッドデッキに使われる米杉の芯材は、カビが発生しないし、腐りもしないが、匂いも強い。木材過敏症の人には反応する人が多い。自分自身も米杉を加工する時は必ずマスクをする。昔、米杉ぜんそくという病名までついたように、マスクがないと咳が止まらなくおそれがあるためだ。
国産の地松は、カビが発生しやすい。自然界に放置すると腐りやすいし、よくねじれるが、強度はある。松類を高温乾燥することにより、ねじれもなく腐らなくなる。この現象はおそらく松の油成分が化学反応したためと思われる。
これと同じようなことは、杉、ヒノキ、ベイヒバなどの針葉樹の高温乾燥材にも言える。化学過敏症の人が接着剤から出る揮発性物資のほかに、針葉樹から出る揮発成分に反応することも考えられる。
[ 月間住宅ジャーナル ]
それでは、木材は健康に良いという常識は大間違いになのでしょうか?
[ 守谷 ]
いや、そうじゃない。赤身はだめだけど、白太なら過敏症を起こさない。それとカビの発生しにくい腐りやすい木材は過敏症を起こさない。例えばモミとかツガとかは、重度のシックハウスには向いている。
モミってのは、この辺りじゃ、がん箱(棺桶)や墓に供える塔婆に使われていた木だ。よく燃えるし、埋めるとすぐに分解される。戦後間もない頃は、この辺(狭山丘陵、トトロの森)では土葬が続いていて、自分も中学の時に墓堀りの手伝いに行ったもんだ。先にじいさんが死んで、ばあさんも続いて死んだ家でね、じいさんから離して穴を掘ったつもりが、じいさんの近くだったので、掘ったら遺体混じりの土が出てきたんだが、不思議とがん箱は消えてなくなっていた。それ位にモミの木ってのは、赤身がなくて、分解されやすい木なんだ。家の外回りには向かない木だが、重度の過敏症の人には栄養分がないから内装には良いはずだ。
持論だが、おそらく栄養分のある木というのは、中心部が雨水などで腐ってしまわないように一種の抗菌作用をもった赤身を形成するんだろう。そうやって、木の強度を保ち倒木を自身で防いで守っているのではないだろうか。抗菌作用があるということは、ヒバの抽出液なんかがそうだが、一種の毒性があるということだ。それが重度のシックハウスの症状のある人には反応してしまう。
だから、抗菌作用があって長持ちする赤身よりも、分解されやすい白太を使った方がシックハウスには良いということになる。
[ 月間住宅ジャーナル ]
無垢材で新築の家を建してたのに重度のシックハウスが治らなかった方は、その後、どうしたんですか。
[ 守谷 ]
6月に完成した家で、こういう風にしたら良くなった。まず、夏の間は、家じゅうを閉め切って揮発成分を出しつくす。そして夜になってから窓をあけて風を通す。これを3カ月間続けて秋の10月から住み始めたらすっかり良くなった。
これは、今から30年ほど前の実験を参考にしたやり方だ。その頃はシックハウスの検証のために長期間、家の中を50~60℃以上の高温にして建材の揮発成分を出していたんだが、結果的には木材が乾燥し過ぎてすき間が出てしまった。
だから、実験ほどに室内を高温にする必要はないが、新築の家なら、夏場の温度を利用して、揮発成分を出してしまうという方法がいい。できれば3年~4年経過した木材を使用するといい。
研究レベルで言うと、シックハウスの原因となる揮発成分は何十年経っても建材に残るとも言われているんだが、実生活レベルでは、ひと夏やるだけで、住み心地がだいぶ変わってくる。
とにかく、化学過敏症とかアレルギー体質とか、その気のある人は、新築やリフォームで、後々ひどい目に遭わないように、あらかじめ用心しておいた方がいい。
木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ2 – 『月刊住宅ジャーナル』2021年10月号掲載
守谷インテリア木工所が月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版) 2021年10月号で紹介されました。以下に転載します。
全文はこちら( monthlyhousingjournal_2110d2.pdf )。
連載 直伝 木づかいのコツ 外まわりの建具のコツ2
補遺篇(其ノ参)
守谷建具(埼玉県)代表 守谷和夫
[ 月間住宅ジャーナル ]
前回(7月号)は、寺院向けに出荷する無垢建具をもとに、外回りの建具のコツについて構造面から教えてもらいました。塗装のコツについても教えてください。
紫外線カットと墨
[ 守谷 ]
最近では、木材にはガラスを謡った無機系の塗料が良いという話を聞くが、何かの誤解ではないかと思う。塗料の組成を詳しく見ないと分からないが、単純にガラスであれば、木材は収縮してもガラスは収縮しないので、表面に目に見えない割れが出て水分が入ってくる。ウレタンだと木材に追従して収縮するので、有機系の塗料でなければ木材の塗装には適さない。
守谷建具では、紫外線をカットする自然系のウレタン塗料を使っている。防腐剤としてタンニン(柿渋の一種)を混ぜていて、その上に紫外線吸収剤の透明なウレタンを塗る。
お寺の古い門札を見たことがあるかな。木が傷んでいるのに、墨で書いたところだけが、新しくて傷んでないから不思議だろう。
[ 月間住宅ジャーナル ]
そういわれてみれば、墨が塗ってあるところは傷んでいません。不思議ですね。
[ 守谷 ]
あれは、黒い墨の成分が紫外線をカットしている。からだ。墨の部分は浮いて、周りは劣化する。化粧品でも同じ効果が出るが、表層の墨で紫外線をカットして下の木材に紫外線が届かないようにしているんだ。
ただし、黒だと赤外線を吸収するので温度が上昇するから、夏になると割れるかもしれない。だから、温度の上昇しない透明な紫外線カットの塗料を使っている。
木材は、風が吹かないと割れないんだが、30~40度の温風でも風が吹くと急激に乾くので割れやすくなる。服は無風だと乾かないが、風が吹くと衣類がすぐに乾くのと同じことだ。
面の取り方に注意
[ 守谷 ]
木製建具、特に木製サッシは、未塗(みそう)で現場に納品することがほとんどだ。この習慣を変えなければ、塗料の塗り方を学んでも役に立たない。現場では、わざわざ丁番(ちょうばん)まではずして塗る職人なんかいないし、一番弱い胴付(どうつき)の木口(こぐち)の塗装までできないから劣化が早くなる。まずは、材料費を少しでも減らしたい元請けを説得して、未装じゃ駄目なんだということを納得してもらって変更させないとだめだ。
特に外部建具、サッシは組立て前に木口に塗装することだ。注意すべきことは、木口の面の取り方だ。まず、胴付きにほぞやダボを差し込む前に、守谷建具では、鉋で45度の面をとってから木口を塗装する。こうすると塗料がしみこみやすくなる。
なぜ、45度の面をとるかというと、木材の水を吸い込む道管(どうかん)は、気圧の変化で浸透圧が異なってくるからだ。
先ほど服が乾くのには風が必要だという話をしたが、木材の木口面が塗料を吸い込むのには、直線の断面にすると、同じ気圧になるから吸い込みにくくなる。斜め45度の面をとると道管の面積が大きくなり、気圧が異なって塗料を吸い込みやすくなる。
室内用の無垢建具では、ここまで塗装はしないが、外まわりの建具では、木口面を樹脂化しないと、水分を吸い込んでしまうから木が傷みやすくなる、こうやって組み立て時にあらかじめ継ぎ目を塗装していけば、雨が降っても大丈夫だというわけだ。
やりにくい箇所としては、ダボ(ほぞ)の箇所がある。ダボの箇所は受ける前にやると接着しにくくなる。だから、塗装した後にダボを掘って接合させるんだ。それと、下枠(したわく)に水抜き用の穴をあけるのをわすれないことだ。また、門戸などは、ミゾの中に5mmぐらいの銅パイプを入れると、通気と銅の緑青(ろくしょう)で防腐効果が出る。
月刊住宅ジャーナル(株式会社エルエルアイ出版)2021年10月号より転載